| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-167

コニシキソウのアリによる種子散布における種子捕食者の影響

*大西義浩(鹿児島大院・連合農),鈴木信彦(佐賀大・農)

コニシキソウでは秋期に生産された種子で、トビイロシワアリおよびオオズアリによる食べ残し型の種子散布(収穫アリ型種子散布)がみられる。また、同時期にヒメナガカメムシ(以下カメムシ)による種子の吸汁食害もみられる。そこで種子捕食者であるカメムシの存在がコニシキソウの繁殖成功に与える影響およびアリによる種子捕食者回避効果を調査した。

カメムシによる食害がコニシキソウの繁殖成功へおよぼす影響を調べるために、カメムシに吸汁された種子と吸汁されていない健全な種子の発芽率を調査した。カメムシに吸汁されていない種子の発芽率は約20%であったが、カメムシに吸汁された種子の発芽率は約1%で非常に低かった。したがって、カメムシはコニシキソウにとって重大な種子捕食者であると考えられた。

コニシキソウ株上のアリの存在がカメムシの吸汁活動に与える影響を明らかにするために、アリが来訪する株と来訪しない株でカメムシの成虫および幼虫の来訪頻度および行動を調査した。その結果、アリの存在はカメムシの成虫および幼虫の来訪頻度、吸汁頻度および吸汁時間に影響していなかった。

カメムシによる種子の吸汁がアリの種子運搬行動に与える影響を調べるために、室内でカメムシに吸汁されたコニシキソウの種子と吸汁されていない種子をアリに運搬させた。オオズアリはカメムシに吸汁されていない健全な種子のほとんどを巣内に搬入し、吸汁された種子と吸汁されていない種子の巣への搬入率に違いはなかった。一方、トビイロシワアリはカメムシに吸汁されていない健全な種子の約80%を巣内へ搬入したが、カメムシに吸汁された種子は約30%しか巣へ搬入されなかった。したがって、トビイロシワアリは健全な種子を効率良く散布し、コニシキソウの繁殖成功に貢献していると考えられた

日本生態学会