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一般講演 P2-172
植物リターの分解には菌類が重要な役割を果たしており、リターの分解に伴い、菌類群集の遷移が起こる。すなわち、リターの分解はさまざまな菌類が順次定着し分解を行った結果として起こる。リターの分解過程における各菌類の役割を明らかにするには、純粋培養下でのリター分解力に加え、菌類の遷移の順序を考慮した分解力の評価が必要になる。本研究ではブナ小枝を材料に、初期定着菌類による分解が、二次定着菌類の定着と分解に与える影響について室内実験を行った。初期定着菌類としては、Phomopsis sp.とXylaria sp.、二次定着菌類としてはMycena polygrammaとPhanerochaete filamentosaを用いた。予想される影響としては次の2つが考えられる:(1)先行定着菌類による分解により、リターの化学性が変化し、それが二次定着菌類の分解力に影響する;(2)二次定着菌類の存在により、先行定着菌類の分解力自体が変化する。本研究ではこれらの影響を分離して評価するために、先行定着菌類にあらかじめ分解させた小枝を滅菌してから二次定着菌類を接種し、化学性の変化の影響のみを評価する処理と、滅菌せずに二次定着菌類を接種し、菌種間相互作用の影響も評価する処理をもうけた。
ガラス瓶に含水率を100%に調整したパーライトを入れ、滅菌した小枝を埋め、初期定着菌類を接種した。3ヶ月間培養した後半数を滅菌し、二次定着菌類を接種してさらに3ヶ月間培養した。回収した小枝はリグニン・全炭水化物・ポリフェノール・可溶糖の重量減少率を測定した。
結果、リグニン以外の成分は非滅菌処理で滅菌処理よりも分解したが、リグニンは非滅菌処理で分解が阻害された。この結果は、菌種間相互作用によりリグニン分解が阻害されることを示唆している。