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一般講演 P2-174

菌類子実体の発生地形特性

辻野亮(地球研),佐藤博俊(京都大),今村彰生(京都学園大),湯本貴和(地球研)

屋久島低地照葉樹林において子実体発生の地形差を菌類の機能群間で比較した.キノコのセンサスルートは,尾根と谷に1本づつ210〜350mのルートを5箇所(川原,半山,餅田,中瀬川,中野)の低地照葉樹林内に設置した.調査は2006年8月下旬と9月上旬,2006年9月上旬に行った.ただし,川原の2005年9月上旬と中野の2005年は調査を行わなかった.全24回の調査においてキシメジ科50株,ベニタケ科38株,イグチ科24株,テングタケ科20株,サルノコシカケ科17株を含む24科250株(うち所属科不明33株)の子実体を確認した.すべての種を込みにした尾根・谷ルートのキノコ株遭遇率(出現キノコ株数/ルート長)は43.2株/kmと34.5株/km,推定発生密度は12749.0株/km2と 14742.0株/ km2であった.発見された子実体を「外生菌根菌」と「腐生菌」,「その他」の機能群に分類して,分類群ごとに尾根・谷地形による遭遇率の地形差を比較したところ,外生菌根菌は谷ルート(5.2株/km)よりも尾根ルート(27.4株/km)でよく発生しており,腐生菌は尾根ルート(11.0株/km)よりも谷ルート(21.1株/km)でよく発生していた.外生菌根を形成する樹木がしばしば尾根に生育するのに対して谷にはあまり生育しないことから,菌根菌は菌根を形成する制約から地形特異的にキノコが発生したのであろう.また,尾根ルート(1.62m)と谷ルート(1.15m)のESW値(発見しやすさの指標)は1.5倍弱異なり,子実体の発見しやすさが大きく異なっていた.林床を歩きながら子実体を探索する場合に良い発見率が期待できるのは探索者の1〜2m近傍だけであると推測できる.

日本生態学会