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一般講演 P2-175
外生菌根菌はブナ科、カバノキ科、マツ科など冷温帯林を代表する樹種の必須共生菌であり、これらの実生が自然林で定着するには、外生菌根菌の感染が不可欠であると考えられる。もし樹種ごとに菌根菌の群集構造が違い、それによって実生の菌根形成が影響されるのであれば、実生の定着適地は近傍樹種によって変わる可能性がある。そこで本研究では、多樹種が混生する冷温帯林において1)宿主樹種による外生菌根菌群集の違い、2)実生の菌根形成における近傍成木の影響、3)実生の菌根菌感染源、の3点を明らかにすることを目的とした。
まず、東京大学秩父演習林内の二次林および原生林の5樹種および7樹種(計8樹種)の成木から細根を採取し、樹種ごとの菌根菌群集を比較した。次に二次林および隣接するスギ人工林、カラマツ人工林からミズナラおよびイヌシデの自生実生を採取し、菌根菌の感染率・群集構造を比較した。また二次林内に閉鎖型(菌根菌感染源が胞子と菌核に限られる)、解放型(閉鎖型に加えて根外菌糸も感染源となる)根箱とともにミズナラの実生を植栽し、菌根菌の感染源特定を試みた。採取した外生菌根は形態分類およびDNA多型分類、ITS領域の塩基配列によって種を推定した。
その結果、成木の外生菌根菌群集は近縁樹種間で高い類似性を示し、樹種の遷移順序や定着後の経過時間によっても変化することが示唆された。また、実生の菌根菌多様性は成木の菌根菌多様性と同様に、カラマツ林よりも二次林で高く、群集構造も採集場所の成木の菌根菌群集との類似性がより高かった。外生菌根性でないスギ林から得た実生は菌根形成率・多様性ともに非常に低かった。さらに、解放型根箱に植栽した実生の菌根菌多様性は閉鎖型よりも高かった。以上のことから、実生の菌根形成は近傍成木の菌根菌による影響を強く受け、根外菌糸が菌根菌感染源として重要であることが示唆された。