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一般講演 P2-178

北海道北部に発達した湿原の泥炭層にみられる微生物群集の分布特性

*秋山 克,清水 了,石島 洋二(幌延地圏環境研究所), 長沼 毅(広島大・生物圏科学)

北海道北部に位置する幌延町は,サロベツ湿原,中峰の平湿原という2つの湿原を有している。2005年11月にラムサール条約登録湿地に指定されたサロベツ湿原は約500cmの厚さの泥炭が堆積しており,平地に発達した高層湿原として生態学的重要性の高い湿原である。一方,北海道大学天塩研究林内の中峰の平湿原は天塩山地の蛇紋岩上に発達した日本最北の山地湿原であり,泥炭層の厚さは約70cmである。

湿原からは地球温暖化ガスであるメタンや亜酸化窒素が放出されているが,もちろんこれらの湿原も例外ではない。前報(2006年新潟大会)では,サロベツ湿原の表層で脱窒や有機物分解,メタン生成に関連する微生物のクローンが検出され,深さ200cm程度までは深度別に特徴的な群集構造を有することを報告した。ただし,このような微生物群集の分布特性が湿原泥炭層の物質循環に及ぼす影響を評価するには,さらに深層へと調査範囲を拡大し,また,形成過程の異なる湿原での分布特性も把握する必要がある。そこで本研究では,2つの湿原を特徴づける環境因子と微生物の分布特性との関連性を明らかにすることを目的として,泥炭層における微生物群集構造ならびに泥炭間隙水質の比較を行った。

サロベツ湿原の8深度(10,30,50,100,200,300,400,480cm),中峰の平湿原の5深度(10,20,30,50,70cm)から採取した泥炭についてDNA抽出を行い,バクテリア(細菌)ならびにアーキア(古細菌)のクローンライブラリーを作成した。また各深度の泥炭間隙水についてイオンクロマトグラフィーを用いた水質分析を行った。

本講演では,両湿原泥炭層の地球化学的プロセスと微生物群集構造との関連性について議論する。

日本生態学会