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一般講演 P2-182

都市と郊外における社寺林の変化

*窪山恵美,藤原一繪

神社や寺の境内地に残されている社寺林は,自然林が残されていることが多い貴重な森林である.しかし,近年,都市化による急激な開発や利用形態の変化により,社寺林自体の消失や孤立化,面積の減少が多く起こっている.

森林の分断化や面積の減少は種組成の変化を引き起こすと憂慮されている.特に,関東地方は平野が広がり,人口も多いことからその影響が大きく出ていると推測される.

そこで,本研究では,関東南部に残されている社寺林の自然林を,周辺緑地面積より都市と郊外に分け,種組成の変化を明らかにし,その変化を引き起こした要因を解明することで,社寺林を保全していく際の基礎資料となることを目的とする.

調査地は,茨城県,千葉県,埼玉県,東京都,神奈川県に残されている自然林を保持する社寺林とした.

過去の調査事例が掲載された資料から自然林を保持し,評価が高い社寺林を調査地点として選定し,植物社会学的植生調査を行った.その結果,イノデ-タブノキ群集,ヤブコウジ-スダジイ群集,シラカシ群集が大半を占めたため,それらの自然林を保持する社寺林を対象に2002年5月から2005年10月にかけて,植物社会学的植生調査を行い,同時に隣接群落とマント群落の有無も判定した.

また,空中写真を用い,GISにより各社寺林の面積と周囲長,周辺の緑地面積を測定した.

解析は,社寺林面積,種数などの量的変化の過去と現在における比較のほか種組成の変化の推移を明らかにするため(1)過去と現在の総合常在度表の比較,(2)Bray-Curtis序列法(1957)による各植生タイプの過去と現在における類似度の比較,(3)DCA法(Hill 1979)による序列化を行った.

さらに,種組成の変化とその周辺環境との関連性について考察を行った.調査地として選定され,植生調査を行うことができた場所は277ヵ所中100地点に留まった.

日本生態学会