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一般講演 P2-187

ジュウイチの雛による宿主操作:宿主は雛の数を認識しているのか?

*田中 啓太(立教大院・理・生命理学/学振PD),森本 元(立教大院・理・生命理学),上田 恵介(立教大・理・生命理学)

ジュウイチ(Cuculus fugax)は東アジアにのみ生息するカッコウ科の托卵鳥で,オオルリ,コルリ,ルリビタキといった山地で繁殖する小型スズメ目の巣に卵を産み込み,雛を育てさせる.その雛は翼の裏側(以下翼角)に口内と同じ鮮やかな黄色の皮膚が裸出した部分を持っており,宿主が巣に餌を運んでくると翼を持ち上げ,この裸出部を誇示する.演者らのこれまでの研究により,他の鳥類では確認されていないこれらの形質は生育に十分な餌を宿主に運ばせるための適応戦術であることがわかっている.

これまで行ってきた観察から,宿主が誤って翼角裸出部に給餌を試みることが確認されている.すると,宿主はジュウイチの雛の実際の口とは分離して存在する黄色の皮膚を別の雛と錯覚してしまい,巣の中にいる雛の数を実際よりも多いと誤認することによってより多くの餌を与えているという仮説が尤もらしいだろう.この仮説を検証するため,ジュウイチの寄生雛を育てているときと,本当の自分の雛を育てているときの,宿主であるルリビタキの行動を詳細に分析した.

まず,寄生雛を育てているとき,給餌の際に宿主が巣に留まる時間は雛がディスプレイした翼角の数に応じて長くなるという結果が得られた.すると,ルリビタキの親において巣に滞在する時間というものは,巣の中にいる雛の‘数’というものに対する特異的な反応であると考えられる.そこで,ルリビタキが実際に自分の雛を育てている巣を用い,雛数を操作する実験を行った.無操作の対照区と比較し,雛数を減少させた場合も増加させた場合も巣に滞在する時間は増加することが予測される.その結果,減少区でのみ在巣時間が増加することが確認された.その他の行動解析の結果も踏まえ,要因を考察する.

日本生態学会