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一般講演 P2-190

東アジア及び南西太平洋のウグイス属のさえずり構造と系統

*濱尾章二(国立科博・自然教育園), Maria J. S. Veluz (Natn. Mus. Philippines), 西海 功(国立科博・動物研究部)

東アジアから南西太平洋の島嶼にはウグイス属 Cettia の種が複数生息している.これらの種の系統関係を mtDNA, cyt. b 領域の塩基配列を用いて推定した.また,鳥類の生殖隔離に重要と考えられるさえずりの構造を比較した.

フィリピン・ルソン島の C. seebohmi とソロモン諸島中部の C. haddeni は,日本・朝鮮半島・中国東北部の C. diphone とは異なり,単系統であることが示された.また,C. seebohmiC. haddeni はやや不明瞭ながら,フィジー諸島の C. ruficapilla,ソロモン諸島南部の C. parens,パラオ島の C. annae とともに単系統となった.これらのことは,C. diphone がやや早く分岐し,その後,東アジアから南西太平洋の島嶼でほぼ同時期にウグイス属各種が分化したことを示唆している.また,台湾の C. fortipesC. diphone よりさらに古い時代に分岐していた.

録音あるいはソナグラムを得ることのできた C. diphone, C. fortipes, C. seebohmi, C. annae, C. ruficapilla のさえずりは,いずれも周波数が一定の導入音とそれに続く周波数変調を伴う部分を持っていた.この共通性は,これらの種が異所的に生息するため互いに異種のさえずりに反応するコストがなかったことと,生息場所であるやぶの音響学的特性によるものと考えられる.

日本生態学会