| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-193

屋久島ニホンザル三群の行動比較

早石周平(琉球大・教育セ)

屋久島海岸林に生息するニホンザルの密度は高い.個体密度が高く,群密度も高い.遊動域の周縁部は隣接群と重複し,群間競合が高く,群の消滅も報告されている.小群は隣接群の遊動域利用に合わせて遊動行動を調整することで,採食競合を生き延びているのではないだろうか.その結果として,この地域の高いニホンザル密度が維持されていると考えられる.

2002年6月から9月に鹿児島県屋久島の西部海岸林で遊動域が隣接するニホンザル三群(群名:Mo,NA,B)を対象に調査を行った.高順位の非発情オトナメスを中心に群れ追跡し,5分ごとにメスを中心に半径20m近くにいるオトナオス,コドモの行動を記録した.行動は採食,休息,移動,不在,その他と分別した.また観察位置を50×50mグリッドに記録した.

調査の結果,群サイズはMo≒NA>Bだった.一日の群れの行動は,群サイズが比較的大きいMoとNA二群ではよく休息する時間帯がみられ,小群のBでは採食,休息,移動行動が時間帯に関わらずみられた.遊動域の形状は,MoとNAは円形に近く,Bは楕円形に近かった.遊動速度には,三群間に大きな違いはなく,MoとNAは遊動域内を広く遊動する傾向がある一方で,Bは,楕円形状の遊動域を直線状に往復する傾向がみられた.

これらのことから,遊動行動を隣接する群の遊動域利用に応じて変えることで,小群の生き残り期間が延長し,海岸林の高い密度が保たれていると考察された.

日本生態学会