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一般講演 P2-195

シロチドリの採餌速度:昼夜・岸沖・温度・風・干出時間の影響

桑江朝比呂(港空研)

【まえがき】干潟で採餌するチドリ類は,堆積物中に隠れている動物を餌にしているため,餌の在処に関する手がかりの頻度・手がかりの検出能力・餌生物の捕食からの逃避能力などによって採餌速度が規定される.一方,これらの要因は干潟の環境条件に影響を受けていると予想される.そこで,環境条件の変化がシロチドリの採餌速度に与える影響について検討した.

【方法】東京湾盤洲干潟において越冬時の採餌行動を観測した.昼間における採餌行動の観察には可視光望遠ビデオカメラ,夜間においては赤外線望遠ビデオカメラを用いた.取得した動画をスローモーションで繰り返し再生することにより,従来法(目視観察)よりも高精度なデータ(つつき速度・採餌成功率・採餌物の同定・排泄速度)を収集した.

【結果・考察】つつき速度は,(1)餌密度が高い,(2)温度が高い,(3)風が弱い,ときに速かった.成功率は,(1)餌密度が高い,(2)温度が低い,(3)干出時間が長い,ときに高かった.これらの結果は基本的に,視覚的な手がかりの利用可能性との関連で説明できる.

つつき速度の昼夜による差はみられなかった.これは,チドリ類が有する高い夜間視認力と主要な餌であるゴカイ類の夜行性に起因していると思われる.排泄速度は,夜間の方が昼間より2.2倍速かった.ここで,排泄速度が採餌速度に比例すると仮定し,夜間における干出時間(採餌可能時間)が昼間よりも長い(本研究では1.7倍)という温帯における冬季の潮汐周期の特徴を考慮すると,シロチドリは昼間よりも3.7倍(2.2×1.7)の餌を捕捉できる可能性があることが示唆された.つまり,「昼間採餌の補足的役割として夜間採餌」という従来までの越冬シギ・チドリ類における採餌行動の認識と正反対の結果が得られた.

日本生態学会