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一般講演 P2-198
海鳥類のなかには,子が巣立った後も親による世話期間が長期におよぶ種がいる.この期間は子が親から独立するための飛翔および採餌技術を習得する期間といわれている.八重山諸島の仲ノ神島で繁殖するカツオドリ(Sula leucogaster)の幼鳥は,巣立ち後1-3ヶ月間の親による世話期間を経て渡去に至る.しかし,幼鳥の多くは越冬地のフィリピン南部周辺海域で落鳥し,初帰還する2-5年齢までの生残率が約30%で,成鳥の年生残率(約90%)よりも低い.従って,カツオドリ幼鳥がこの独立期に‘どの程度の飛翔能力を習得し,どのような海域を利用しているのか’を明らかにすることは,高い死亡率の要因の一端を解明するものと考えられる.
仲ノ神島において,第1子により巣外に追い出された第2子を5雛保護飼育した.巣立ち後は渡去するまで放し飼いにし,巣立ち54-92日目には渡去した.5羽には巣立ちから約2ヶ月の間GPSを装着した.
5羽中4羽が巣立ち後しだいに1tripの離巣時間(最大55.5h),飛翔距離(最大151.6km),飛翔到達点(最大50.5km)を伸ばしていく傾向がみられた.4羽の飛翔速度は平均33.8km/hであった.4羽の飛翔軌跡は1)沿岸飛翔,2)島嶼間飛翔,3)沖合飛翔の3パターンがみられ,巣立ち1ヶ月目は1)が73.0%と最も多く,巣立ち2ヶ月目は2)が55.6%,1)が27.8%と共に多かった.4羽の離巣時の主な時間は陸棚内で費やされていた.これらの結果から,幼鳥の渡去日齢を考慮すると,幼鳥は独立期に飛翔能力を向上させながらも,巣立ち1-2ヶ月の幼鳥の中には飛翔能力が発達途中に渡去する個体がいると示唆される.また,沿岸性とされる本種の特性を,幼鳥は独立期にすでに有していると考えられた.