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一般講演 P2-200

Bactrothrips brevitubusにおける母性効果について

*柴田智広,土田浩治(岐阜大・応用生物),Brenda D.Kranz(Adelaide大)

オオアザミウマ亜科の食菌性アザミウマは餌資源の変動の激しい環境に棲息する種が多い。また、母親が産卵様式を使い分け(卵生卵・卵胎生卵)、これが子供の性に決定的な影響を与えている。したがって、食菌性アザミウマは餌資源と雌雄の繁殖戦略の関係を知る上で好適な材料である。Bactrothrips brevitubusは、卵胎生卵は♂になり、卵生卵は卵塊で産下され、♂♀ともに発生する。今回は菌密度(餌資源)と産卵様式の関係と各産卵様式における卵サイズと母♀の体サイズ及び各産卵様式由来の♂の体サイズについて調査し、それに関わる♂♀の繁殖戦略の評価を試みた。

餌量を操作した実験結果から、♀が栄養条件によって産卵様式(つまり性)を産み分けていることが示唆された。これは本種で報告されている、性比の変動の一因であると考えられた。平均卵サイズには産卵様式による違いはなかったが、卵胎生卵の卵サイズは母♀の体サイズと正の相関があった。卵胎生由来の♂は卵生由来の♂より大きかった。これは、卵サイズの違いが成虫の体サイズ決定に影響しているものと考えられる。

以上のことから、♀の繁殖戦略として、好栄養(卵生)では♀をたくさん生産する、貧栄養(卵胎生)では少ないが大きい♂を生産する。この時♂は貧栄養下の♀と交尾しても子供を残せないため、好栄養下の卵塊形成♀をめぐり争うものと考えられた。各産卵様式由来の♂のメリットととしては、卵生由来♂は姉妹と交尾できる、卵胎生由来♂は♀をめぐる争いで勝利しやすいことが考えられた。 Bactrothrips brevitubusにおいて餌資源の変動の激しい環境では、2つの戦略を使い分けることが適応度を上げることに対し有効であったと考えられた。

日本生態学会