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一般講演 P2-203
【目的】生息域利用の個体群内多型は、多くの動物において報告されている。この現象は最近アカウミガメの雌成体においても確認された。安定同位体分析と衛星追跡を併用した過去の研究によると、小型の雌成体は主に外洋で浮遊生物を、大型の雌成体は主に浅海で底生生物を補食しているものと推察された。本研究では、潜水データを記録できる衛星用電波発信器を用いて、各々の生息域における雌成体の潜水行動を観察した。
【方法】2005年の7月下旬に、屋久島永田浜で産卵を行った2個体(標準直甲長795と900 mm)に衛星用電波発信器(ST-20, Telonics Inc., USA)を装着し、アルゴス衛星システムで産卵期以後の回遊潜水行動を調べた。この発信器では、位置情報以外に、6時間毎の0〜250 mの間の7つの深度層で費やした時間、潜水時間、及び表面水温のデータが取得できる。
【結果及び考察】小型と大型個体は各々197と124日間追跡された。小型個体は太平洋の外洋を回遊した。その間、昼夜関係なく0〜25 mの水深で過ごしていた。これは小型個体が表層で摂餌していたことを意味した。潜水時間は夜の方が昼より長かった。大型個体は東シナ海の陸棚へ回遊した。この個体は、昼は100〜150 mで、夜は0〜25 mで大半の時間を過ごしていた。これは大型個体が昼は海底で摂餌し、夜は中性浮力を保てる水深で休息していたことを示唆した。潜水時間は昼夜で差がなかった。水温の季節的な低下に伴い、代謝が低下し潜水時間は長くなった。これらの潜水行動は推察されていた主な食性と一致しており、海棲爬虫類における資源多型が明らかになった。