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一般講演 P2-204

冬季から繁殖期にかけてのヒヨドリの行動圏について

山口恭弘(中央農研・鳥獣害研)

関東地方におけるヒヨドリの個体数は秋季から冬季にかけて増加し春になると減少する.これは北日本や高標高地のヒヨドリが越冬のために移動してくるためと考えられる.冬季において増えた個体は主に群で行動するが,留鳥個体はゆるやかななわばりを持ちつつ,ときおり群に混じることを2002年の日本鳥学会大会において報告した.ヒヨドリの繁殖期は5-9月であるが,冬季から繁殖期にかけて番の行動圏を追跡した研究はない.本研究ではDNA解析により雌雄の判明した2個体を対象に,冬季から繁殖期にかけての行動圏や番行動について解析した結果を発表する.

調査は2006年2-6月にかけて,茨城県つくば市農林研究団地内において,留鳥ヒヨドリ2個体を電波発信器,および肩タグでのマーキングにより行った.追跡は週に2, 3回,1日1回,1時間行い,5分おきに対象個体の地点と行動を記録した.ヒヨドリがいた環境はコマツナ畑,畑沿いの防風林,それ他の林や樹木,建物に分けて記録し,また単独,番,群れのいずれで行動していたかを記録した.個体A(雄)は2月17日から6月27日にかけて44日間2640分,個体B(雌)は3月7日から5月10日にかけて27日間1620分追跡でき,確認できた地点数はそれぞれ317(確認率:96.5%)と166(同:99.4%)であった.

2, 3月には両個体とも単独でいることが多く,時折群に混じりコマツナ畑や桜で採食をしていた.4月の後半になると番で行動することが多くなり,5月以降は基本的に単独が番で行動することが多くなった.なわばりは2, 3月は別々に形成していたが,4月後半には両個体のなわばりを内包する形で広いなわばりを形成した.その後は元の雌のなわばりを中心とする形でなわばりを形成し,その中で営巣も行った.また,この番は同じ年の10, 11月に番で行動していることを確認した.

日本生態学会