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一般講演 P2-206

ベニシジミの静止時の翅の開き方に対する他個体の接近の影響

井出純哉(京大・農)

蝶では雄が雌にしつこくつきまとって交尾を求める行動がしばしば観察される。このような雄のハラスメントにより雌は産卵や採餌などの行動の中断を余儀なくされるため、雄を避ける行動が進化していることが予想される。雄を避けるには発見されないのが一番である。蝶の翅はたいてい表が目立つ色彩をしているのに対して裏は地味な隠蔽色なので、雄に見つからないためには翅を閉じればよいと考えられる。そこで、ベニシジミを対象に、雄が近付くと雌は翅を閉じて身を隠す行動をとっているかどうか調査した。

野外での観察の結果、雌は翅を開いてとまっていた時に同種個体が飛来すると翅を閉じることが多いことがわかった。他の生物が飛来した場合にも翅を閉じることはあったが、同種に対する場合よりも少なかったので、翅を閉じたのは主に同種に対して身を隠す行動だったと思われる。飛来した雄は翅を開いていた雌に対してはしばしばつきまとって求愛した。しかし、開いていた翅を閉じた雌やもともと閉じていた雌に対してはほとんどつきまとうことはなく、雄がつきまとった割合は雌が翅を開いていた場合より有意に低かった。従って、雌は雄が飛来したのに気付いたら翅を閉じることで雄に発見されることを防ぎ、雄のハラスメントを避けることができていると考えられた。

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