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一般講演 P2-211

カクレクマノミ幼魚群における優劣関係の出現と成長パターンの比較

*松本浩司・田坂恵美・合田幸司(愛媛県立長浜高校)・服部昭尚(滋賀大・教育)

カクレクマノミはハタゴイソギンチャク(以下宿主と呼ぶ)と共生し、通常、1個体の宿主に繁殖ペアと1−3個体の幼魚からなる群れを形成する。雄から雌への性転換が可能な雄性先熟魚であるため、最優位個体が雌で次が雄、3位以下は常に未成熟であり、体サイズ順位に依存した繁殖行列(queue)が確立している。繁殖ペアの存在しない宿主では、同サイズの幼魚が同時期に定着することが知られるが、その後どのように群れ内順位が確立されるのかはわかっていない。先住者、特に最劣位個体が幼魚の定着を妨害し、幼魚の新規定着は先住者の消失後に起こると考えられているが、そのメカニズムは明らかではない。本研究では、実験室で同時期に1繁殖ペアから得られた同サイズの幼魚を用い、宿主定着後の成長パターンと優劣関係を、飼育実験{2個体飼育隔壁なし(N=10)、2個体飼育隔壁あり(N=10)、5個体飼育(N=5)、対照実験の1個体飼育(N=10)}により、3ヶ月(0、1、2、3ヶ月後)にわたって調べた。また、各個体のコンディションファクターや摂餌量、移動量、攻撃行動を調べ、劣位個体が死亡する過程も追跡した。その結果、初期に優劣が決まった場合、その後の成長パターンに顕著な差が生じたが、優劣の決定には必ずしも初期体長差は関係しなかった。また、優位個体は劣位個体の行動と成長を制限したが、劣位個体のコンディションは低くはなかった。優劣関係の生じるメカニズムについて考察する。

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