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一般講演 P2-214

マルハナバチの餌選択における他個体の情報的利用〜類は友を呼ぶ?

*川口利奈, 大橋一晴, 徳永幸彦(筑波大・生命環境科学)

多くの動物にとって、餌の質や獲得しやすさは大きく変動し、その予測は困難である。したがって、利用可能な餌を効率的に発見し、かつ変動に応じて利用する餌をすばやく切り替える能力は、しばしば個体の適応度を大きく左右する。このため動物の中には、自分よりも先に採餌している「先客」に追従することで、未知の餌をより効率的に発見するものがいる。しかし、彼らが餌場で出会う先客は、その情報的価値において同質のものばかりとはかぎらない。たとえば特定のタイプの餌を好む動物は、自分と餌の好みが異なる先客より、自分と好みが似ている先客に追従したほうが、欲しいタイプの餌を発見できる効率は高くなると予想される。では実際の動物は、自分と似た先客にたいして、より追従する傾向をもつのだろうか?

マルハナバチは種ごとに口吻の長さが異なり、それぞれにつり合う長さの花筒をもつ花種を好むことが知られる。したがって餌を探している個体は、好みが異なる他種よりも、好みが似ている同種の先客にたいして、より追従する傾向をもつかもしれない。この可能性を検討するため、我々は、ツリフネソウを訪花中のトラマルハナバチを対象とした野外実験を行った。実験では、見知らぬ花(リンドウ)の2つの花序の一方には同種(トラマルハナバチ)個体を、他方には口吻長が短く餌場で出会う機会の少ない他種(クロマルハナバチ)個体を先客として添え、採餌中のトラマルハナバチにいずれか1つの花序をえらばせた。するとハチは、他種の先客よりも同種の先客がいる花序を好んで訪れる傾向を示した。この結果は、マルハナバチが未知の花を訪れる際、見慣れぬ他種より同種の先客に追従することにより、自分の口吻長につり合う長さの花を発見する効率を高めていることを示唆する。

日本生態学会