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一般講演 P2-218
ハダニでは♂成虫が成虫化直前の静止期♀をガードする。しかしながら、同じ葉の上で複数の♂にガードされる♀と単独の♀がしばしば観察される。なぜこのような違いが生じるのか、カンザワハダニを用いて検証した。ある♂成虫にガードされた♀と単独の♀が同じ葉の上に居ると、♂成虫の多くは前者の♀を選んだ。これは2番目の♂が1番目の♂の歩行痕を辿ったためでもなく、♂成虫が♀を選り好んだためでもなかった。また、♂成虫の存在そのものも他の♂成虫の行動に影響しなかった。一方、♂成虫の代わりに若虫に♀をガードさせると、♂は単独の♀よりもその♀を選んだ。このことから、♂成虫にガードされた静止期♀が他の♂を誘引すると考えられた。
また、♂にガードされた静止期♀は単独の♀よりも捕食者のケナガカブリダニに見つかりやすかった。もしハダニの静止期♀が♂にガードされることで受動的に他の♂も誘引するのであれば、自分の身を危険にさらすことになる。そこで、ハダニの静止期♀が意図的に他の♂を誘引するのか調べた。静止期に入る前に捕食者と同居した♀と同居しなかった♀間で♂の誘引性を比較したところ、事前に捕食者と同居した静止期♀は同居しなかった個体に比べて♂成虫を誘引しなかった。このことから、ハダニの静止期♀は周囲の状況に応じて♂を誘引するか否か決めていることがわかった。ハダニの静止期♀はガードする♂(後の配偶相手)を直接選べない。複数の♂が集まると、♂どうしが♀を巡って争う。複数の♂を誘引することで♀は間接的に配偶相手を選り好むのではないかと考えられた。