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一般講演 P2-222

同時雌雄同体の交尾中隔離のプロセスとメカニズム

*杉 緑(信州大・理),浅見 崇比呂

オナジマイマイ(以下オナジ)とコハクオナジマイマイ(以下コハク)は、異所的に進化したと考えられる。種内の交尾では、互いに陰茎を相手の生殖口に挿入し、精包を交換する。しかし種間で交尾すると、コハクの陰茎が交尾中にオナジから抜け、オナジは精包を受け取れない。オナジがコハクから陰茎を抜く時間は種内交尾の場合と変わらず、コハクは精包を受け取る。したがってコハクのみが雑種を産み、オナジは産卵しない。解剖して調べたところ、交尾開始後オナジは90分以内、コハク同士では90分以降に精包を交換することがわかった。オナジがコハクに精包を渡す時間は、種内交尾の場合と有意な違いはなかった。しかも、コハクがオナジから陰茎を抜くのは精包を作り始めた後であり、コハクはその精包を食べることがわかった。陰茎表面の微細な構造が種間で明瞭に異なるが、雌側の交尾器には差異が見つからない。ゆえに、雌雄の交尾器の物理的不和合が関与しているとは考えられない。雑種F1,F2に崩壊はなく、正常に生存、繁殖する。したがって、本2種の間には、コハク雄による交尾後受精前隔離が異所的分化の過程で副次的に進化したと考えられる。

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