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一般講演 P2-223

低酸素条件に対する魚類の反応

*浅原宏子,佐原雄二(弘前大・農生)

本研究は小型の在来淡水魚種モツゴPseudorasbora parvaの低酸素に対する行動解明を主目的としている。

ヒシTrapa japonicaなど浮葉植物の繁茂によって厳しい低酸素になる溜池にもモツゴは生息している。そこでモツゴが生息し、浮葉植物の繁茂する小規模な溜池の水質を春から秋にかけて計測した。溶存酸素濃度は8月に最も低くなり、とりわけ早朝に深刻な低酸素条件がもたらされる。実験的にヒシを実験池に植栽したところ、植栽しない対照池に比べて、夏季の早朝に溶存酸素の低下を確認した。

低酸素条件下で生存できる魚類の多くは、酸素が比較的豊富に含まれる水面のごく薄い層を利用して水面呼吸(aquatic surface respiration : ASR)を行う。モツゴはASRに適した上向きの小さな口と平らな頭部という形態的特徴を持っている。低酸素になるタイプの溜池と非低酸素タイプの溜池のそれぞれから4月と8月にモツゴを採集し、低酸素条件への反応を実験的に調べた。どちらの時期に行った実験でもモツゴは低酸素条件によく耐え、これはオオクチバスなどとは対照的な結果であったが、非低酸素溜池の個体は低酸素溜池の個体よりも高い溶存酸素濃度で、水面に上昇する傾向が見られた。

生息池での観察では、酸欠の生じる時間帯にはモツゴは水面呼吸のためにずっと水面にとどまらざるをえない。これはモツゴの採餌活動を阻害し、成長にも深刻な影響を及ぼしている可能性がある。そこで2006年9月末から10月初めに複数の溜池で多数のモツゴを採集し体長を計測した。その結果、夏季に低酸素になる溜池で採集された当歳魚のサイズ分布は、低酸素にならない溜池の当歳魚に比べて小さい方に偏っていることがわかった。

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