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一般講演 P2-224
アジメドジョウ Niwaella delicataは、近畿地方および中部地方に生息する日本固有の淡水魚で、多くの地域個体群の減少・絶滅が懸念されている。府県版レッドデータブックなどでは、本種の減少要因について護岸工事や森林伐採による河床への土砂の堆積をあげ、底質環境を生息制限要因として指摘している。しかし、本種の底質選択に関する研究は少なく、演者らが行ったPHABSIMによる生息場所解析やリーチスケールの生息場所・非生息場所の環境比較の研究があるにすぎない。これらの調査では一定の成果を得たが、他の環境要素による影響や実施時期が夏季に限定される問題があった。アジメドジョウは湧水で越冬する習性が知られており、底質選択も季節によって変化する可能性が高い。今回は、野外調査と室内実験を組み合わせて、底質選択とその季節変化を明らかにした。夏季と秋季に行った野外調査では、最大径70−600mmの石礫をその下に潜むアジメドジョウとともに採集し、底質サイズとアジメドジョウの出現頻度や個体数を比較した。その結果、夏季から秋季にかけて、底質サイズが大きい石礫ほどアジメドジョウの出現頻度が高くなり、個体数も多くなる傾向が認められた。室内実験では、4分割した水槽に最大径8−312mmのサイズの異なる石礫やはまり石、浮き石を充填してアジメドジョウの分布を調べたところ、アジメドジョウは水槽内でもっとも大きい底質を選択し、底質の組み合わせを変えても結果は同じであった。また、底質の状態は多層の浮き石を選択し、はまり石を避ける傾向が認められた。これら室内実験の底質選択性は秋季に強まり、野外調査の結果を支持した。今回の結果は、アジメドジョウが越冬に際して礫間に潜入することを裏づけ、越冬期の生息環境要求として湧水の誘引に加え、大きな浮き石の存在が重要であることを示している。