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一般講演 P2-225

DNA親子解析によるクラカオスズメダイのメス擬態型スニーキング効果の解明

*佐川鉄平(琉球大院・理工),中尾芳典(琉球大・理),桑村哲生(中京大・教養)

スズメダイ科魚類は一般的に雄が作った産卵床を複数の雌が訪れて付着性の卵を産みつけ、卵塊が孵化するまで雄が単独で保護するなわばり訪問型複婚の繁殖を行う。雄の代替繁殖戦術として飛び込み型のスニーキングが多くの種で報告されているが、スニーカー雄の行動やスニーカーの受精率について詳しく調べた研究はまだ少ない。

発表者らの野外調査により、クラカオスズメダイ Amblyglyphidodon curacaoでは飛び込み型のスニーキングに加えて、体色や行動を産卵時の雌に似せる雌擬態型のスニーキングが存在することが明らかになっている。本種の雌は長時間にわたって連続的に卵を産みつけるため、スニーカーの繁殖成功には産卵床滞在時間が大きく影響すると推測される。産卵床滞在時間は2つのスニーキング方法で大きく異なり、飛び込み型では1秒以下から数秒程度でなわばり雄に追い払われてしまうのに対して、雌擬態型でははるかに長く、なわばり雄に攻撃されずに10分以上滞在しつづけることもあった。

本研究では野外1コロニーの全個体(雄23、雌21)を捕獲・個体識別し、なわばり雄に人工産卵床を与えた上で雌雄の産卵行動をビデオで記録し、各産卵におけるスニーカーの産卵床滞在時間を求めた。スニーキングを受けた卵塊は回収し、孵化直前まで水槽内で飼育した。この胚と個体識別時に採取したなわばり雄、産卵雌、スニーカーの組織を用いてマイクロサテライトDNA による親子判定を行い、スニーキング方法が繁殖成功に与える影響を明らかにした。

日本生態学会