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一般講演 P2-227
メスによるオスの色彩に対する選り好みは、最も盛んに行われている性淘汰研究の一つである。派手なオスが"もてる"という結果の研究が多数ある一方で、ネガティブな結果も多い。こうした結果の原因として、一夫一妻種においてメスが選択可能な候補オスの状況が変動することが一因となりうると考えられるが、この問題は見落とされがちである。鳥種によっては、つがい相手決定は短期間のうちに集中的に行われず、繁殖期を通じて次々にメスが繁殖地に飛来し、つがい形成が長く続く場合も多い。このような状況下では、各メスのつがい選択の対象となりうるオス数とその色の程度は、常に変化することになる。繁殖期終了時点でのつがい形成率とオスの色彩を関連付けて検討されるケースがしばしあるが、前述のようなつがい候補オスの状況変化が想定される場合は、その影響を考慮したメスによる選り好みの検討が必要となるだろう。
本研究の材料であるルリビタキは性的二型を示す小型の鳥である。さらにオスには年齢間で羽色二型がある。若いオス(初繁殖齢)は茶褐色の外観だが、高齢なオスは鮮やかな青色となる。このため、オスがなわばり制で、かつ、一夫一妻の配偶様式である本種においては、メスは独身オス数とその色比(青:茶)が常に変化する状況下で、いずれかのオスを1羽のみ選択する。
我々は本種の繁殖期になわばりオスを個体識別し、各なわばりを定期的に巡回する事により、メスによるつがい形成を把握した。その際、メスが選択したオスの色タイプ(青or茶)を記録した。また、その時点での独身オス数を各色毎に記録した。同一メスによる複数回のつがい形成が認められた場合は、疑似反復の影響を回避するために、初回のつがい形成に関するデータを用いた。その結果、本種メスによるオスの羽色二型に対する選好性は認められなかった。