| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-234

コバネヒョウタンナガカメムシ単独雄による交尾対妨害の意義

*日室千尋,藤崎憲治(京大院・農・昆虫生態)

単独雄の交尾対に対する妨害は昆虫をはじめ様々な動物で報告されており、交尾対を引き離し、雌を乗っ取るためであるとされている。コバネヒョウタンナガカメムシTogo hemipterusにおいても交尾対に対する執拗な妨害が観察された。しかし、本種において単独雄は雌を乗っ取ることができなかった。以前の実験結果から、一度交尾した雌は長い交尾間隔(不応期)を示すことが明らかとなっている。また、交尾時間を短くすることで不応期が短くなることが明らかになっている。そこで単独雄は妨害によって交尾時間を短くし、その結果、不応期が短くなることで将来の雌獲得効率を上げ、適応度を上げているのではないかという仮説を立て実験を行った。本種はあまり移動しないため(歩行性の上、活動性の高い種でないため)その雌に対する未来における遭遇確率は低くはないと思われる。バージンの雌雄を用いて交尾対を形成させた後、すぐにライバルとなる単独雄を投入し交尾対妨害の様子や交尾時間、不応期の変化の様子を調べた。その結果、予想に反し、交尾時間は単独雄がいる場合には、いない場合に比べて有意に長くなった。しかしながら、交尾対妨害の頻度が増すと交尾時間は短くなった。すなわち、交尾対妨害が執拗であると交尾時間は短くなった。では、なぜこのような交尾時間の変化が現れたのだろうか?その変化について交尾雄、単独雄、それぞれの立場から考察する。また、不応期の変化の結果を踏まえて、交尾対妨害の意義について適応的に考察する。

日本生態学会