| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P2-236
近年、社会性昆虫の進化研究において、社会性の獲得には病原菌が関与してきたことが示唆されてきた。シロアリと同様に、社会性昆虫であるアリでも他個体へのグルーミング行動(以下アログルーミング)が菌防除行動として有効であるという予測がされてきたが、実証研究はなかった。シロアリとは異なり、本種アリを含めた膜翅目の昆虫は、アログルーミングだけでなく自己の体表へのグルーミング(以下セルフグルーミング)を行うことができる。このことから、アログルーミングのみならず、セルフグルーミングにも病原菌防除の役割が期待できる。これまで我々はトビイロケアリの死体から分離した昆虫病原菌Metarhizium anisopliaeを用いて、菌防除手段とされてきたグルーミング行動の役割について解明すべく研究を行ってきた。
本実験では、病原菌の濃度を変えてアリに接種し、グルーミング行動の観察を行った。行動の解析はグルーミング回数をカウントして行った。その結果、セルフグルーミング行動は菌胞子の濃度に関係なく一定回数が常に行われているが、アログルーミング行動は菌胞子濃度に伴って増加することがわかった。この結果からアログルーミングが菌胞子に対する反応であるとみなされたが、本当に菌を取り除く行動であるのかは未知であった。本発表では、アログルーミングの菌除去能力の有無と、アリの生存に対する影響を、セルフグルーミングしか行えない隔離飼育の環境下でのアリのグルーミング行動と比較しながら考察する。