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一般講演 P2-237

インゲンゾウムシの資源開拓における親子間対立

*石田健太郎(筑波大・生命共存), 徳永幸彦(筑波大・生命共存)

親が子の利用する寄主を選ぶ寄生性の植食性昆虫では、兄弟間で敵対的な相互作用があると、親と子で適応度上の利害の不一致が起こることがある。資源を巡る兄弟間の競争があるときには、クラッチサイズ(Parker and Mock 1987)や幼虫の寄主間の移動分散頻度(Roitberg and Mangel 1993)に親子間の利害の不一致が生じうることが知られている。食植性昆虫が寄主を利用するには、コストを被って寄主の防衛機構を打ち破らねばならないことがある。一度誰かが防衛機構を打ち破ると他の個体はそれに追従できるような状況においては、どの幼虫がそのコストを被るのかという兄弟間の敵対的な相互作用が、親子間の利害の不一致を生み出す新たな要因となる。

インゲンゾウムシ(Acanthoscelides obtectus)は幼虫期に豆を寄主として利用する。豆の周辺に産卵された卵から孵化した幼虫は豆を探しまわり、豆の表皮に穴を開けて侵入する。幼虫が豆の表皮に穴を開けて侵入する際には死亡する危険が伴う。また一度表皮に穴が開けられると他の幼虫はその穴から豆内に侵入できる。本研究では、子がどの程度積極的に豆の表皮に穴を開けようとするのかについての最適な状態が親と子で異なることを、最適化理論とゲーム理論を用いて解析した。子よりも親の最適状態のほうが子が自ら穴を開けようとする傾向が強く、親子間の利害の不一致が示された。この関係は、親としては「多少の犠牲を払ってでも多くの子に豆の中に入ってほしい」が、子としては「穴を開けるのに失敗して死亡する危険を侵したくない」と表現できる。

本研究の結果から、植物の防衛機構を打ち破るコストが、寄生性の食植性昆虫に親子間の利害の不一致をもたらす原因の一つであることが示唆された。

日本生態学会