| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P2-242
警告色の多様性を説明する1つの仮説として、強化すべき2つの形質(警告色・不味さ)への投資配分に関するものがある(仮説1)。これはある程度のシグナルと不味さを既に保持している動物が、さらなる警告的効果を望む場合に生じる。シグナルと不味さ、どちらか一方の形質だけを強化してできる形質の異なる組み合わせが、時に、同等な警告的効果を獲得することによる。また集合性といったような生活史形質は、警告色と関連して、警告的効果をたかめることが知られている。その場合、しばしば、警告色とそれら生活史形質が正の相関や連関関係をみせながら進化することが示唆されている。結果として、警告色の多様性がみられる場合、それら生活史形質にも多様性が維持されていることが期待される(仮説2)。本研究の対象種である九州西部のイモリには、腹側の警告色の色彩パターンに地理的変異がみられる。ある個体群を構成するイモリは、その腹側の色彩パターンのほぼ全面を赤色に発色させ、パターンの変異が個体群内で小さい。このような強い警告シグナルをもつと考えられる個体群だけでなく、その逆の特徴をもつ個体群(色彩パターンの赤色部分の減少傾向と、それに伴う変異の増大)も存在する。結果として個体群間の変異は、地理的なモザイク構造をみせている。本研究では、イモリの不味さを表す形質として神経毒であるテトロドトキシンの保持量について解析した。またイモリは、警告シグナルの効果を促進する形質として、捕食者に腹側の警告色をみせる防御行動をとることが知られている。そこでイモリがこの行動を行う頻度についても解析した。本発表は、イモリの警告色の地理的変異について、不味さを表す形質や警告シグナルの効果を促進させる形質が、上記の2つの仮説を支持するような変異を示しているかどうかを検討する。