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一般講演 P2-245
ゴイサギ(Nycticorax nycticorax)は、サギ科の鳥類の1種であり、基本的には夜行性だが、繁殖期には日中も採食を行うようになることが知られている。昼と夜とは、太陽がもたらす直接的な明るさや温度だけでなく、それに対応して生物的環境も大きく異なる。そのため、本種が日中と夜間とで採食行動や採食環境、場所を切り替えている可能性が考えられる。また、この種では、視覚以外の感覚器官の発達は認められておらず、夜間も視覚採食をしていると考えられている。そのため、夜間唯一の自然光、すなわち月光の強さが採食行動に大きな影響を与えている可能性が考えられる。本発表では、本種の個体が、昼夜間で採食場所を切り替えている可能性、また、月光が夜間の採食場所選択に与える影響について検討する。
調査は、青森県津軽平野南部において行った。電波発信機を装着した個体の位置を、昼夜にわたって毎日、4〜5時間おきに調べた。1999年〜2000年の繁殖期から繁殖期後までの2ヶ月以上にわたって連続して追跡することができた3個体から得られたデータを用いて解析を行った。本種の採食のための行動圏は集団繁殖地を中心に十数kmに及ぶことが知られているが、個体は、集団繁殖地の周囲をくまなく利用しているのではなく、平均0.4 km2の特定の領域内で継続して採食をしていた。しかし、それらの領域内では頻繁に採食地点を替える行動が見られたため、それらの切り替えには実際の採食のしやすさ、すなわちエサ場の環境の変動が影響している可能性が考えられる。解析では、昼夜間で採食していた地点の特徴を比較するとともに、月の有無や満ち欠けによる採食地点の違いを分析する。