| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P2-247
ニホンザルは群れを作り、まとまりを維持したまま遊動するが、どのようにまとまりが維持されているのかは明らかにされていない。宮城県金華山島に生息するニホンザルでは、通常サイズの長年にわたってメンバーシップの安定した群れであるにも関わらず、頻繁にサブグルーピングが生じることが知られている。そこでサブグルーピングの生起場面に注目し、どのような状況において群れのまとまりが崩壊してサブグルーピングが生じるのか、特に発声行動との関連から検討をおこなった。
金華山島に生息するニホンザルA群を対象に、2004年7月に14日間の調査を行なった。2人の調査者がそれぞれ非発情のオトナメスを個体追跡すると同時に、GPSを用いて位置を記録し、10分ごとに2個体間の距離を測定した。1セッションを2時間とし、計25セッション行った。
個体間距離の分布を検討した結果、個体間距離が250-300m以内であるときには群れがまとまっている状態であると考えられた。そしてそれを超えて広がった時、互いに独立に遊動するようなサブグルーピング現象であると考えられ、これは調査期間内に8回観察され、サブグループ間の距離は最大で1200mであった。クーコールの発声頻度は、サブグルーピングの生じる直前には平均よりも低頻度であり、サブグルーピングの生じた直後には平均よりも高頻度であることが明らかになった。
ニホンザルが平常状態に最も高頻度に発声する音声であるクーコールは、群れのまとまりの維持と関連しており、離れてしまった個体に対して合流を促すというよりも、近くにいる個体が離れないようにする機能があると考えられた。