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一般講演 P3-003
センチュウによる寄生がキノコ食ショウジョウバエ類の個体群密度や群集構造に影響を与えていることが北アメリカ及びヨーロッパの各地域で調査されてきた。また、これらの研究においてセンチュウによる寄生率がショウジョウバエ種間、季節間及び地域間で大きく異なることが明らかにされてきている。本研究においては、Kimura & Toda (1989)の簡単な報告以外に情報のなかった、センチュウの寄生が日本のキノコ食ショウジョウバエ類に与える影響を明らかにすることを目的とした。そこで、北海道大学苫小牧研究林において2000年から2003年の4年間、6月から10月まで決まったコース上に発生したキノコの種類、発生量などを記録し、そのキノコ上のショウジョウバエを採集するというセンサスをほぼ毎日行った。採集したショウジョウバエの成虫は、カーレ液で固定した後、センチュウによる寄生の有無と、寄生されている個体とされていない個体の蔵卵数の差を調べた。その結果、寄生率は、どの年においても7,8月で高くなり、9,10月に低くなること、センチュウに寄生された場合、どのショウジョウバエ種においても殆ど不妊化することがわかった。また、キノコ食ショウジョウバエ群集の中で個体数の相対頻度の高いHi. sexvittataやHi. trilineataよりも相対頻度の低いD. unispinaやD. orientaceaで寄生率が高いことがわかった。これは、相対頻度の高いショウジョウバエ種ほど寄生率が高くなるという過去の報告(Gillis & Hardy 1997)と異なる結果となった。この結果に関しては、各ショウジョウバエ種の産卵戦略と寄生率の関連を考察する予定である。