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一般講演 P3-004

ハラタケ目子実体の種類と発達段階が菌食性昆虫群集の構成に及ぼす影響

*山下 聡(名古屋大),肘井直樹(名古屋大)

キノコ食昆虫は一般に広食性であるといわれ,その説明の一つとして,子実体の種類間にみられる化学成分の違いが,昆虫の寄主選択において重要な役割を果していないことが挙げられている。一方,化学成分の質や量は子実体の種類の違いだけでなく,発達の過程においても変化することが考えられる。そこで本研究では,ハラタケ目の子実体内部に形成されるキノコ食昆虫群集を対象に,子実体の種類が昆虫群集の構成に及ぼす影響がどの程度あり,その重要性は子実体の発達に従いどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。愛知県北東部のアカマツ林において1999年7月から2002年7月まで野外調査を行い,pCCAにより解析した。27属2457本のキノコを採集し,439本から16科4616個体の昆虫を得た。キノコ食昆虫群集の構成に認められた分散全体のうち,10〜19%が子実体の種類(属)によって説明された。また,モリノカレバタケ属のみが,子実体の発達段階にほぼ関係なく,昆虫群集の構成に影響を及ぼしていた。キノコ食昆虫群集において優占的な構成者の一つであったショウジョウバエ科(9種844個体)に注目すると,子実体の種類によって分散全体の19〜34%が説明された。テングタケ属やモリノカレバタケ属はショウジョウバエ群集の種構成に有意な影響を及ぼしていたが,影響を及ぼしていた子実体の種類は発達段階によって異なった。キノコ食昆虫群集全体とショウジョウバエ群集のいずれにおいても,昆虫群集に影響を及ぼしていた子実体の種類数に発達段階間での違いは認められなかった。これらのことから,子実体の種類は昆虫群集の構成に影響を及ぼしているものの,その重要性は大きくなく,発達段階間で重要性が異なるとはいえないことが示された。

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