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一般講演 P3-006

シカがササに生息するタマバエに及ぼす間接効果: 産卵・ゴール形成・適応度への影響

田渕 研, 尾崎研一, 上田明良, 日野輝明(学振PD/森林総研北海道, 森林総研, 森林総研北海道, 森林総研関西)

ササに生息する昆虫群集 (ミヤコザサタマバエと天敵寄生蜂2種) にシカが及ぼす間接効果を明らかにすることを目的として, 我々はシカ柵 (20×20m) 5セットを用いた野外操作実験を1997年より行っている. 調査はシカによる森林衰退が著しい大台ヶ原(奈良県)で行った. これまでの調査から, 柵でシカを排除すると (1) ササは大きくなって密度が減る, (2) タマバエのゴール密度は減るが生残数は増える (大きなササではゴール壁が厚くなり寄生蜂から逃れられる), (3) 寄生蜂2種の種構成が逆転することが明らかになった.

本研究では, (a) ササ密度一定での袋掛け産卵実験, (b) 大小のササを用いたタマバエの産卵選好性実験, (c) 大小ササ内のタマバエ幼虫体重の計測から, シカがタマバエの適応度に及ぼす間接効果とその原因について検討した. (a) タマバエは大小のササに同程度産卵したが, ゴール形成数は小ササの方が多かった. ササの硬さ分析から, 大ササは小ササより硬く, ゴール形成に物理的抵抗性があることが示された. (b) タマバエは (ゴール形勢に不利な) 大ササにより多くの産卵行動をとった. (c) 大ササに形成されたゴールではタマバエ幼虫の体重が重かった. これらの結果を総合して考察すると, シカはゴール形成に適した小さく柔らかいササを増やすが, 小ササに形成されたゴールは天敵による攻撃を受けやすく, 結果としてタマバエの適応度を減らす (シカがタマバエの適応度に負の間接効果を与えている) ことが明らかになった. また, タマバエはゴール形成に適さないが天敵から逃れやすく, 成長に適した大ササを産卵場所として選好することが明らかになった.

日本生態学会