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一般講演 P3-008

礁斜面と礁原に生息する造礁サンゴ群体の空間分布

*中村隆志,中森亨(東北大・院理)

琉球列島のサンゴ礁海域では主に裾礁と呼ばれる独特のサンゴ礁地形が発達している。裾礁は岸から沖に向かって数百m〜数kmの範囲に礁原と呼ばれる水深が最大でも5m程度の浅い平坦面が分布し、その先には礁斜面と呼ばれる緩やかな傾斜面が分布している。礁原の縁には礁嶺と呼ばれる低潮位面すれすれにまで達する高まりが数十〜数百mの幅にわたって海岸と平行に分布し礁斜面とを区切っている。そのため、礁斜面は波あたりが強いのに対し礁原は非常に穏やかな環境となっている。その環境の違いを反映して、礁斜面では被覆状や塊状、テーブル状が、礁原では樹枝状や葉状と優占する造礁サンゴの群体型が大きく異なる。

本研究では、琉球列島石垣島白保サンゴ礁域において、大きく環境や群体型の異なる礁斜面と礁原の二地点のサンゴ群集においてそれぞれ5m×5mの方形枠を用いてサンゴ群体の空間分布について調査を行った。そして、そのデータを基に同種内の大型の群体に対する小型の群体の空間分布をRipleyのK関数を用いて解析した。その結果、礁斜面では大型のサンゴ群体と小型群体は無関係にランダム分布しているのに対し、礁原では小型群体が大型群体の周りに集中して分布していることが明らかになった。造礁サンゴは一般的に放卵、幼生の着床というプロセスによって群体数を増やしているが、礁原に多く生息する樹枝状、葉状のサンゴは破片化によって群体数を増やすことが報告されている。礁斜面の群体がランダム分布を示したことは、外洋から運ばれてきた幼生のランダムな着床を反映しているものと考えられる。それに対し、礁原の集中分布は、大型の群体が破片化し散乱するプロセスを反映しているものと考えられる。このことは礁原のサンゴ群体は破片化を主な生息域の拡大戦略の一つとして使っていることを示唆している。

日本生態学会