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一般講演 P3-011

深泥池浮島の底生動物はなぜ多様なのか?‐植生類型に応じた栄養起源からの解釈‐

*加藤義和(京大・院・理), 村上宜之(京都府大・院・農), 奥田昇(京大・生態研センター), 陀安一郎(京大・生態研センター), 竹門康弘(京大・防災研), 堀道雄(京大・院・理)

京都市北部に位置する深泥池は9haほどの貧栄養湿原であり, 中央部には高層湿原の浮島がある. ここには,維管束植物とオオミズゴケの優占する凸部(hummock), ハリミズゴケの優占する凹部(hollow), ならびに維管束植物がまばらに生える泥地(bare hollow)がパッチ状に分布し, 浮島湿原に特有の景観を形成している. これら3種の植生では光合成の過程が異なるため, 有機物の炭素安定同位体比には差異を生じていることがわかった. そこで本研究では, 浮島上の植生類型ごとに底生動物を採集し, 炭素ならびに窒素の安定同位体比を測定することによって, 各底生動物の栄養起源を調査した.

底生動物の採集は,2006年11月末に行なった. 浮島上の3種の生息場hummock, hollow, bare hollowにおいて底生動物を採集し, 安定同位体比を測定した. その結果, 安定同位体比はd13C=-29〜-21‰, d15N=-1〜3‰の範囲にあり, 種ごとにほぼ同じ値をとった. しかし, 複数の生息場にまたがって分布する種では, 生息場ごとにd13Cの値が異なっていた. 以上の結果から, 浮島上の底生動物は生息場ごとに異なる起源の餌を利用していることが示唆された. ただし, 生息場をまたがって分布する種数は少なく, 生息場ごとに特異的な種数の方が多かった. したがって,深泥池浮島の底生動物群集における種多様性維持機構として, 植生類型に対応した生息場の分割が重要な働きをしていると考えられた.

日本生態学会