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一般講演 P3-014

深泥池浮島湿原の植生類型に対応した底生動物群集の組成と機能

*村上宜之(京府大・院・農),加藤義和(京大・院・理),高原光(京府大・院・農),竹門康弘(京大・防災研・水資源セ)

高層湿原の表層地形は,一般にミズゴケなどの植生様式に応じて凸部(hummock)と凹部(hollow)を示し,それぞれの地点で水質や水文環境が異なる事が知られている.また,底生動物群集もこれらの微生息場に対応して種組成が変わる事が知られている.深泥池の浮島湿原の場合は,hummockには陸生のオオミズゴケが,hollowには水生のハリミズゴケが,そしてbare hollowには水生のミツガシワの優占する泥地が広がっている.本研究では,これらの植生類型に対応した小型底生動物群集の種組成を明らかにした上で,各底生動物群集の機能について考察する事を目的とした.本調査では,2006年6月にhummock・hollow・bare hollowの3類型各10地点において,水質(EC・DO・ORP・pH・水温)を計測し,25×25cmの枠内をメッシュサイズ250μmの網でスイーピングし,底生動物を採集した.採集された動物のうち,250-500μmのサイズ分画で得られた小型底生動物(メイオファウナ)を対象とした.その結果,植生類型ごとに優占するタクサや割合は異なった.特に線虫綱のTylenchida目,甲虫目のキムネマルハナノミ属はhummockで,カイムシ亜綱のキプリス上科,ササラダニ亜目のタテイレコダニ科,モンユスリカ亜科はhollowやbare hollowで有意に多く現れた.これらの差異は測定した水質要因では説明できず,植生類型に付随する生息地条件によると考えられた.また, 水生動物-土壌動物,生食者-分解者-捕食者などの類型で比較した結果,必ずしもhummockに陸生の分解者が多いとは限らず,植生類型による機能的な分化は明瞭ではなかった.

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