| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P3-022

岩礁潮間帯における食物連鎖長の制限要因と空間スケール依存性

堀 正和(瀬戸内水研),山本智子(鹿大水産),仲岡雅裕,熊谷直喜(千葉大自然科学),奥田武弘,野田隆史(北大地球環境)

生物群集の形成維持機構は空間スケール依存的に異なる.食物網構造も生物群集構造を表す一つのパラメータであるため,当然ながらパラメータとその形成維持機構には空間スケール依存性が存在するといえる.最近では空間階層構造を考慮した例やべき乗則を用いた例などが報告されるようになったが,まだ報告例が少なく,また空間階層性を正しく調査デザインにいれた研究もないため,食物網構造の空間スケール依存性が説明されるには至っていない.

食物網構造の中でも特に食物連鎖長はその制限要因を巡って多くの仮説が立てられた.最近の総説では制限要因としてエネルギー仮説,動態仮説,群集の履歴や生態系サイズなどが上げられており,これらを元に食物連鎖長の制限要因に関する論述モデルが作られている.しかし各制限要因は作用する空間スケールが異なることが予測されるにもかかわらず,このモデルでは空間スケールについては考慮されていない.本研究では岩礁潮間帯生物群集を対象に,食物連鎖長とその制限要因の空間スケール依存性の解明を目的に調査・解析を行った.

北緯31〜43度の間に6つの調査海域を選定し,各海域内に5つの海岸を選出し,各海岸に5つのトランセクトを設置し,各トランセクト内の群集構造について調査を行った.この空間階層構造を持たせたデータセットを用いて,解析では従属変数として食物連鎖長のトランセクトレベルでの値,海岸レベルでの値,海域レベルでの値を計算し,独立変数として生産性,物理環境,生態系サイズ(群集サイズ),履歴(種組成)を用いた.発表ではこれらの解析結果をもとに食物連鎖長の制限要因間の相対的重要性と空間スケールとの関連について議論する.

日本生態学会