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一般講演 P3-026
宮城県蔵王に位置する山岳湿原、芝草平には大小様々な多数の池塘が点在している。これら池塘では、生物群集のなかでユスリカ幼虫が多く見られ、その生物量は池塘により大きく異なっている。このような小水界では、水生生物を支えるエネルギー源として周囲から流入する有機物が重要と考えられるが、炭素過多になるため、栄養塩負荷量もユスリカ幼虫の生物量に影響を及ぼしている可能性がある。この可能性を検証するため、2005年夏期に任意に選んだ芝草平の8池塘で隔離水界による操作実験を行った。隔離水界は、直径35cm容積30Lの筒を底泥に5cm差し込んで設置した。実験にあたっては、各池塘ごとに4つの隔離水界を設置し、それぞれ、窒素添加区(最終濃度: 18μM)、リン添加区(最終濃度: 1.5μM)、グルコース添加区(最終濃度: 60μM)及び対照区とした。ユスリカ幼虫を捕食する水生昆虫及び両生類はすべて隔離水界から除去した。また、産卵によるユスリカ幼虫の新規加入がないよう、隔離水界上部には網目2mmのメッシュを張った。実験は3週間行い、その間、定期的にユスリカ幼虫と羽化した成虫を採集し、生物量を測定した。実験開始時のユスリカ生物量は池塘によって大きく異なっていた。池塘をブロックとした分散分析を行ったところ、実験終了時のユスリカ生物量は、対照区に比べグルコース添加区で低くなる傾向が見られた。これは、グルコースが利用しやすい有機態炭素であるため、細菌が増加し酸欠となったためかも知れない。一方、リン添加区では藻類が顕著に増加したが、ユスリカ生物量には対照区との間で有意な差は見られなかった。これら結果から、ユスリカの生産力は有機物流入量や栄養塩負荷量には制限されておらず、池塘間でのユスリカ生物量の違いは産卵量や死亡率によるものと推定された。