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一般講演 P3-027

捕食圧の違いがもたらすマメアブラムシ−アリ共生系の変異

*片山 昇(京大・生態学研究センター), 北條賢(京都工芸繊維大学・工芸学部), 大串隆之(京大・生態学研究センター)

マメアブラムシとアリとの関係は変異が大きく、多くのアリを誘引することもあれば、アリを全く誘引しないこともある。このような共生関係の変異は一般的な現象である。しかし、「この違いが何によって生じているのか?」という問題については、まだ研究が始まったばかりである。そこで、アリ−アブラムシ相利共生に変異をもたらす要因を明らかにするために、佐賀市と大津市で、マメアブラムシのアリ随伴頻度とそこに訪れる天敵の種類と個体数を調べた。マメアブラムシの天敵として、数種類の寄生蜂、ヒラタアブ幼虫およびテントウムシ類がみられたが、大津ではアブラムシの天敵の数が多く、アリに随伴されるコロニーの割合は高かった。次に、佐賀市と大津市からマメアブラムシを1コロニーずつ採取し、いくつかの形質について比較した。その結果、佐賀と大津のマメアブラムシでは、生存日数や産子数などには違いがみられなかったが、佐賀よりも大津のマメアブラムシの方が誘引されるアリの個体数が多く、アリの誘引性は強かった。このようにマメアブラムシの種内でアリの随伴の強さが異なる系統が存在し、捕食圧が高い場所では、アリと共生関係をもつ系統が優占することが示唆された。さらに、これらの系統では、(a)アブラムシの体表化学成分、(b)排泄する甘露の糖およびアミノ酸成分、および(c)保有する共生細菌組成に違いがみられた。これらの結果に基づき、マメアブラムシのアリ随伴性に変異をもたらす生理的および生態的要因について議論する。

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