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一般講演 P3-028

植生の異なる渓畔林におけるシュレッダー群集の比較

曽根 伸(愛媛県立北宇和高等学校)

森林の多くが人工林によって占められる日本では河川の渓畔林までスギ林によって覆われている。河畔林植生がシュレッダー群集に与える影響は大きいことが指摘されており、スギ林によって覆われる渓流ではその減少や単一化が危惧される。本研究では渓畔林とシュレッダー群集の関係が天然林と人工林でどのように異なるのかを明らかにすることを目的とした。

調査は2003年冬に愛媛大学農学部附属演習林で行った。フサザクラとスギのリターバッグを用い、それぞれの河川の淵5か所に計100個設置した。設置後、両河川からバッグを回収した。落葉は残存率を求め、河川間および樹種間で比較した。バッグに進入したシュレッダーは1mm以上のものを分類した。

河川に設置した落葉は両樹種とも日数に伴って残存率が減少したが、両樹種間で異なり、河川間での相違は見られなかった。フサザクラは残存率が30%以下になったが、スギは約70%であり、前者は残存率低下が早かった。

両河川の水生動物の組成は全く異なり、人工林ではヨコエビ類が90%以上であったのに対して、天然林では多様な水生動物が見られた。設置したバッグに移入した水生動物の94%がシュレッダー群集であった。特にカクツツトビケラ属、ニホンヨコエビが主要なシュレッダーであり、それらの移入は両河川で大きく異なった。カクツツトビケラ属は天然林のフサザクラに多かったのに対し、ニホンヨコエビは人工林のフサザクラに多く、さらにスギにはカクツツトビケラ属よりも早期に移入した。

天然林と比べて人工林ではフサザクラへの移入は遅かったが、残存率の低下に大きな相違が見られなかったことから、ニホンヨコエビの一個体当たりの破砕効果は大きいと考えられる。また、人工林でスギはより早期に利用されることから、それぞれの河川でのシュレッダー群集の特性だけでなく、落葉のコンディショニングに相違が見られる可能性がある。

日本生態学会