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一般講演 P3-030
マラウイ湖(アフリカ)は、300種を越える魚種で構成される極めて多様性の高い魚類群集を育む。魚種のほとんどは湖内で適応放散したとされるシクリッド魚類であり、その多くが付着藻類を摂食するため、激しい種間競争、とくになわばり行動が頻繁に見られることが特徴的である。これまで、近縁で生活要求の似通った多数の種が共存できるメカニズムとして、野外での生息場所が深度や傾斜に沿って極めて細かく分割されていることがし増されてきた。その一方で、季節による食性の大きな変化を示唆する報告も少なくない。本報では、マラウイ湖内の7地域の岩礁帯で行われた群集構造の調査から、摂食行動と摂食なわばり行動のデータに基づき、地域間の群集構造の変異についての解析を行った。各種の摂食位置(岩の傾斜角度)は、地域ごとでみると変異が少なく、同じ種は同じ角度の付着藻類を摂食している傾向が見られた。これには種間の激しい競争関係が寄与していることもが示唆される。地域間で比較すると、他種への干渉を頻繁に行う種においては、摂食位置の地域差が著しい傾向が見られた(Pseudotropheus zebra 'BB'、P. zebra 'Cobalt'、Labeotropheus fuelleborni)。一方で、他種から干渉されることの多い種においては、摂食位置に地域差が見られるもの(L. trewavasae)と見られないもの(Protomelas fenestratus)が見られた。これらの結果は、地域ごとには細分化されたニッチが、地域間で比較すると固定的ではないことを支持している。同時に行われている同位体分析と胃内容分析、および季節変化の解析と併せ、ニッチが細分化された群集における構造のダイナミズムとその機能を考察したい。