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一般講演 P3-045

希少猛禽類生息地における餌動物としての哺乳類相

*山田文雄(森林総研),安藤元一(東京農大)

近年,希少猛禽類の減少が問題とされ,その原因として餌動物の生息減少が指摘されている.ノウサギは中間的な体サイズ(体重2-4kg)と数の多さのために,ワシ,タカなどの猛禽類や肉食獣の餌となり,生態系の中で重要な役割を担っている.本研究では,希少猛禽類のクマタカ生息地におけるノウサギ生息数と分布様式及び他の餌動物との関係を検討した.調査地は群馬県利根村の国有林を中心とする森林を対象に3年間(2003-2005年)実施した.糞粒法で推定したノウサギの生息は0.024-0.061頭/haであった.ノウサギは若齢カラマツ人工林や伐採跡地で多く,また広葉樹林でも生息が認められたが,壮齢人工針葉樹林では少なかった.クマタカ生息地(面積2,123ha)におけるノウサギの推定生息数は平均113.2頭(最少87.9-最大138.7頭)で,これらのノウサギはクマタカ生息地面積の29.5%の面積に生息した.とくにノウサギの全生息数の74.5%を占める植生高5m未満の森林面積は8.3%しか占めず,分散的に分布した.スポットライトセンサス調査による発見動物数は5-7種で,平均出会率(頭数/km)は0.71-1.29であった.出会率の高い種はシカ(0.25-0.8)やタヌキ(0.24-0.27)で,ノウサギ(0-0.07)で低かった.自動カメラ調査による撮影動物種数は19種で,撮影頻度(枚数/1時間)の高い種はタヌキ(0.4),テン(0.3),シカ(0.1)で.ノウサギ(0.025)で低かった.以上の結果から,ノウサギの生息数は,過去の他地域のレベル(1980年代の0.3-1頭/ha以上)に比べてもかなり少なく,また他の哺乳類に比べて相対的に少ない種と考えられる.

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