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一般講演 P3-048

岩礁潮間帯固着生物群集の加入過程における不規則性:空間スケールによる変異

*熊谷直喜(千葉大・自然), 堀正和(瀬戸内水研), 山本智子(鹿児島大・水産), 仲岡雅裕(千葉大・自然), 野田隆史(北大・環境)

生物群集構成の空間的変異における規則性の解明は群集生態学の主要なテーマである。しかしその前提として、まず特定の空間条件における群集構成再現の規則性を確かめる必要があるだろう。本研究の目的は、この規則性における緯度勾配と水平方向の空間スケールによる変異を解明することである。

研究対象は、垂直な岩礁性潮間帯に形成される固着生物群集とした。調査地は、北緯 31-43 度にかけての日本列島太平洋岸に 6 地域、その各地域内に 5 海岸、各海岸内に 5 地点(合計 150 地点)を階層的に配置した。各地点に、平均潮位を中心として上下各 50 cm 、横 30 cm の固定コドラートを設置し、春・夏・秋の年 3 回、除去・加入実験を繰り返した。毎回 5 cm 目の格子板を用いて各格子点の直下を占有する固着生物種を記録し、調査終了後に生物を完全除去した。加入被度について、2004, 2005, 2006 年における各年間、同季節の Bray-Curtis 類似度と、各年内でランダムに解析範囲内で再配列させた加入群集間の類似度とを比較した。類似度算出と再配列を行う解析単位(grain)は、最小を 1 格子列、最大を 1 地域とし、加入の種プールを想定した解析範囲(extent)は 1 地点から北方・南方地域まで変化させた。

最小スケールでは、規則的な加入を示す調査区よりもランダムな加入を示す区が優占した上に、散逸的な加入も生じた。さらに高次のスケールでは規則的加入と散逸的加入とが共に増加した。これらの結果は、決定論的過程とロッタリーモデルのような確率的過程とが複合的に作用し、加入パターンを形成することを示す。解析の全貌は本講演にて発表する予定である。

日本生態学会