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一般講演 P3-050

渓流の落葉破砕食昆虫におけるストイキオメトリー-NP比の変異

*佐藤竜一,加賀谷隆(東大・農)

群集の種多様性と生態系機能の関係を解明することは,生態学における大きな課題である。渓流における落葉リター分解が,落葉破砕食性昆虫(シュレッダー)の種多様性とともに高まる事例はいくつか報告があるものの,その機構についての理解は不十分である。演者らはこれまでの研究により,摂食様式の異なる2タイプのシュレッダー種が共に存在する場合に、リター分解は促進されることを示唆する結果を得ている。生態的ストイキオメトリー論によれば、NP比の異なるシュレッダーの共存はリター分解を促進することが予測される。一方、シュレッダーにおいて,NP比の変異は摂食様式とともに体サイズや発育段階の相違と対応している可能性がある。しかしながら、河川底生動物の特定の摂食機能群について,元素比変異を詳細に調べた研究はない。本研究は、渓流における落葉リター分解を促進しうるシュレッダー種の組み合わせと,それらが生じる時空間的状況を予測するために,様々なシュレッダーについて摂食様式とともにNP比の変異を明らかにし、シュレッダーの元素比変異を生じる要因を検討することを目的とする。また、異なる元素比の食物資源を利用するシュレッダーの元素比を比較することで、ストイキオメトリー論の前提である消費者の元素比の恒常性についても検討する。

流入リターのCN比、CP比が異なる2つの渓流地点において,リターとシュレッダーの採集を毎月1回行い、それぞれのC,N,P含有率を測定した。また,シュレッダーの摂食様式(葉リターの表面を削り取るか,全体を噛み砕くか)を飼育実験によって明らかにした。シュレッダーの元素比について,分類群、摂食様式,体サイズによる変異とともに、同一種については齢、出現季節、生息地点による変異についても検討した。リターとシュレッダーのNP比の変異から,複数種のシュレッダーの共存がリター分解を促進させる状況について考察した。

日本生態学会