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一般講演 P3-051

岩礁潮間帯の底性生物群集における多様性の緯度勾配:機能群による違いとその要因

*山本智子(鹿大・水産),野田隆史,奥田武弘(北大院・環境科学),堀正和(瀬戸内海区水研),熊谷直喜,仲岡雅裕(千葉大院・自然科学)

低緯度地域ほど種数が多くなるという種多様性の緯度勾配は、様々なハビタットや分類群で報告され、生態学上最も普遍的なパターンと考えられる。海域においてもこの傾向は見いだされているが、栄養段階が低い生物ほど、また観察する空間スケールが小さいほど、この傾斜は緩やかになるとされている (Hillebrand 2004)。演者らが太平洋岸の6地域の岩礁潮間帯で行った調査でも、固着性動物や藻類食者では低緯度に向けて増加し、その傾斜は空間スケールの拡大に伴って大きくなったが (Okuda et al. 2004)、藻類ではどの空間スケールでも緯度勾配が見られなかった。このような藻類の特徴はこれまでにも指摘されており (Pielou 1979)、その要因についてもいくつかの仮説が挙げられている (Bolton 1994)。その多くは、熱帯における環境の安定性や棲息面積の広さなど、他の分類群やハビタットでは緯度勾配の要因となり得る環境条件が藻類では成立しないというものであるが、これらの仮説に対する検討はほとんど行われていない。一方、緯度勾配の成立要因は空間スケールによって異なると考えられ、局所スケールでは種の共存を決定するような生態学的スケールのプロセスが、地域スケールでは進化史的スケールのプロセスが重要になってくる。どのような空間スケールでも緯度勾配を示さない藻類においてはどのプロセスが他の生物と異なっているのか、空間スケールに応じて検討した研究はない。そこで今回は、緯度勾配の成立要因として挙げられている仮説を空間スケールに応じて整理し、固着生物である藻類と懸濁物食者について比較することによって、両者の違いをもたらす要因を明らかにしたい。

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