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一般講演 P3-055

コミカンソウ科における送粉様式の多様性と進化

*川北篤,加藤真(京大・院・人環)

イチジク属およびユッカ属の花はそれらの子房に産卵する雌のイチジクコバチ,およびユッカガによってそれぞれ送粉されている。幼虫は発達途中の胚珠を食べて成熟するが,種子の一部は食われずに残るため,両者は「絶対送粉共生系」と呼ばれる巧みな相互依存関係にある。これらの共生系は送粉者の高い種特異性,能動的な送粉行動,花形態の特殊化などのように共進化の産物が数多く見られ、古くから進化生態学の幅広い分野でさまざまな話題を提供してきた。近年、こうした共生系の新たな例がコミカンソウ科カンコノキ属において発見された。カンコノキ属はアジア熱帯を中心に300種以上が知られる雌雄同株、木本性の属である。日本には5種が知られ、これらすべてが種特異的な種子寄生者であるハナホソガ属の蛾によって送粉されている。ホソガは夜に花を訪れ、口吻を使って自ら送粉を行った後、雌花に産卵する。果実は6〜12個の胚珠を含むが、ホソガの幼虫はその一部のみを食害するためにカンコノキの結実が保証されている。カンコノキの花は他の送粉者を排除した特殊な構造をしており、両者が共進化の果てに著しい相互依存性を発達させたことを物語っている。本研究ではコミカンソウ科のその他の幅広い分類群における送粉様式,およびハナホソガ属の生活史の調査から,カンコノキ属の近縁種群においてさまざまな送粉様式が見られ,ハナホソガとの相互作用も多様であることを明らかにした。また両者の分子系統解析および年代推定の結果から,コミカンソウ科?ハナホソガ属における絶対送粉共生系の起源や,両者の多様化の歴史について考察を行った。

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