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一般講演 P3-057

タロイモショウジョウバエとサトイモ科植物の送粉共生

*竹中宏平(長崎大・国際連携研究戦略本部), 殷建涛(中国科学院西双版納熱帯植物園), 戸田正憲(北大・低温研)

タロイモショウジョウバエ属(Colocasiomyia)は、サトイモ科・ヤシ科・モクレン科の花から採集され、東洋区・パプア亜区から26記載種45未記載種が知られている。調査された系では、ハエが送粉を行う一方、宿主植物の花序−果実序で繁殖する送粉共生系が確認されている。[ハエ属内の種群]と[宿主植物の分類群]には対応が見られ、送粉昆虫と宿主植物が共進化してきたことを示唆している。本属のcristata種群はサトイモ科タロイモ連を利用し、各種の宿主選択幅が狭い。また、同じ宿主植物の花序を2種以上のハエがすみ分けて利用する現象が見られる。典型的には雌花利用型種と雄花利用型の2種が共存する系が知られていたが、近年になって雌花利用型種のみの系、3種共存系などが発見された。

2003―6年に、マレーシア・インドネシア・中国で調査を行った結果、以下のことが明らかになった。1)19新種を発見し、うち1種を記載した。2)既知の「雌花利用型種と雄花利用型種の2種系」に対し、新たに「雌花利用型の1種系」、「雌花部と雄花部両方を利用する1種系」、「雌花部利用型が共存する2種系」、「雌花利用型・雄花利用型・中間部利用型の3種系」といった繁殖特性が発見された。3)受粉実験および訪花行動観察から、ハエは宿主植物の唯一あるいは最も効率的な送粉者であると考えられた。4)ハエと宿主植物の生活史には対応が見られ、これらが共進化してきたことが示唆された。5)分子系統解析の結果、cristata種群の基部で雌花繁殖型種と雄花繁殖型種のクレードに大きく別れたが、それぞれのクレードには、中間的な繁殖特性を示す種が1種ずつ含まれた。雌花繁殖型と雄花繁殖型のどちらの繁殖特性が先に進化したかは明らかにならなかった。

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