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一般講演 P3-065
開花時間の違いは、交配前の生殖隔離に大きく関与し、種分化の研究において興味深い形質である。蛾媒の花は夜咲きだが、夜咲きは昼咲きから進化したと言われている。しかし、開花時間の遺伝的基盤の詳細は分かっておらず、開花時間の違いがどのような遺伝的変異の蓄積で進化したのかは未だに謎である。
キスゲ属の夜咲き種キスゲと昼咲き種ハマカンゾウは、花の寿命がたったの半日であり、人工的に雑種後代作成が可能である。そこで本研究では、開花時間の遺伝的基盤を明らかにするため、親種と雑種F1、雑種F2の開花から閉花の様子を、デジタルカメラを用い15分間隔で撮影して開花パターンを調べた。
雑種F1世代では、朝開花の昼咲きパターンが多かったが、一部夜咲きパターンが観察された(個体内でも昼咲きと夜咲きパターンがみられた株があった)。雑種F2世代については、全体的に昼咲きと夜咲きの二峰型分布を示した。さらに、開花から閉花過程の時刻の分布を解析したところ、0-12時に開花を始めた株の分布は、開花過程を通してまとまっていた。一方、12-24時に開花を始めた株は、その後のばらつきが大きく、12-24時に開花運動が完了する夜咲きのパターンと翌日の0-12時に開花運動が完了する昼咲きのパターンがあった。また、0-12時に開花運動が完了する昼咲きのパターンは、12-24時に閉花運動を開始した。一方、12-24時に開花運動が完了する株は、0-12時に閉花運動を開始した夜咲きパターンと12-24時に閉花運動を開始したパターンがあった。閉花過程が進むにつれて分布の分散が増大する傾向にあった。
以上のことから、開花運動が完了する過程と閉花運動の開始には少数の因子が関与しており、開花過程初期と閉花過程後期には、多くの因子が関与していることが示唆された。