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一般講演 P3-066

訪花頻度と開花タイミング: どちらが他殖の促進には有効か?

石塚大吾(新潟大・院・自然科学),堀崎敦史,新倉聡((株)トーホク),*小沼明弘(農環研)

一般に他殖性の植物は自殖性の植物に比べ有害遺伝子を多く保持しており、自殖は適応度の低下につながることが知られている。すなわち他殖性の植物にとって他個体との授受粉の成否は適応度の重大な構成要素である。動物によって花粉を媒介される植物の場合、誘因効果(花弁、芳香)や報酬(花蜜)への投資による花粉媒介動物の誘因と、他個体との開花タイミングの同調が他殖の促進には有効であることが予想される。つまり高い訪花頻度によって多くの花粉の持ち出し(花粉を通じた繁殖)と他殖花粉による受粉(他殖種子の生産)が期待され、また他個体との開花の同調によって送粉効率が高まることが期待される。それでは、訪花頻度と開花同調性ではどちらが相対的に他殖の促進には重要なのであろうか?

本研究では、他殖率の高低に重要であると考えられる上記の2つの要因、すなわち訪花頻度および他個体との開花の同調性が他殖率(系統間交配率)に及ぼす影響を、2品種の近交系統からなる人工集団を構成し評価した。材料には栽培植物であるBrassica rapa (アブラナ科)を用いた。系統間交配率を目的変数、訪花頻度、開花同調性、気温、それぞれの花の花序中での位置を説明変数としてロジスティック回帰分析を行った。分析の結果、開花の同調性の増加は系統間交配率を有意に増加させることが検出されたが、訪花頻度、気温、花の位置の系統間交配率に対する影響は有意ではなかった。本研究に試供した2系統間での交配率は、系統間での開花の同調性に最も大きな影響を受けていた。しかし、一方で訪花頻度の影響は開花の同調性に比べ小さなものであった。

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