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一般講演 P3-068

好まれる花、好まれない花〜ミツバチの花選好性の評価〜

*田中篤(筑波大), 小沼明弘(農環研), 原尚資(筑波大), 堀崎敦史, 新倉聡((株)トーホク), 大澤良(筑波大)

ミツバチは同じ種類の植物を選択し連続して訪花する性質をもつことが知られている。この性質は、効率よく採餌をするための戦略と考えられており、特定の植物種の特徴を学習し記憶する能力と、それらに基づいてその植物を識別する能力に依存している。この選択的な訪花行動は植物の繁殖に影響することが言われている。農業における種子生産現場では、同種の2系統(両親系統)を同一の圃場に植栽し、その系統間で交配した種子(F1種子)を採種するが、その際の種子生産効率の低下の原因として、片方の系統への選択的訪花が疑われている。そこで本研究では、Brassica rapa L.のアブラナ科野菜F1品種の両親系統(P1及びP2)間でミツバチの選択的訪花行動を評価した。この2系統の花は、形態的に類似している。また、P2はP1より約1.3倍花蜜の分泌量の多い系統である。実験は、6m×6mの隔離網室を3つ用い、1つにはP1のみを、1つにはP1とP2の両系統を、もう1つにはP2のみをそれぞれ30個体(1個体ずつポット栽培)配置し、各網室で4日間ミツバチにその系統を学習させ、5日目にすべての網室をP1とP2の両系統に置き換えてミツバチの訪花行動(訪問順序)を調査し、学習の効果についても検討した。その結果、3処理ともに花蜜の多いP2に訪花する頻度が高く、ミツバチが高い識別能力を持ち、花蜜の違いに応じて選択的な訪花行動をとることが示唆された。また、P1のみを学習させたミツバチは、他の2つの処理区と比べてP1-P2間の往来が多くなり、学習に応じてP1への訪花が増加することが示唆された。

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