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一般講演 P3-069
花とその送粉昆虫の形態が密接に対応する例として、マルハナバチ媒花の花筒長とマルハナバチの口吻長とのマッチングが知られている。マッチングによって、マルハナバチは花筒の奥にある蜜を低コストで採餌することができ、また花筒の長い花は短い口吻長を持つ昆虫を排除することで、効率的に受粉を行えると考えられる。ところが、シソ科ヤマハッカ属カメバヒキオコシでは、花筒長に一致する口吻長をもつミヤママルハナバチに加えて、花筒長より長い口吻をもつトラマルハナバチが送粉に関与している(Suzuki and Akazome 2000)。これまで、2種のマルハナバチは一回訪花の送粉効率には差がないことが指摘されているが、訪花頻度については明らかでない。そこで本研究では、花筒長と口吻長のマッチングが訪花頻度にどのように影響しているのかを明らかにすることを目的とし、東京都奥多摩三頭山において、1)カメバヒキオコシに対するマルハナバチ2種の訪花頻度、2)マルハナバチ2種の野外集団における口吻長の変異、3)カメバヒキオコシに訪花したマルハナバチ2種の口吻長の変異、を調査した。
結果、1)マルハナバチ2種の訪花頻度は、2種間で大きな違いはみられず、年度や場所によって差が見られた。2)マルハナバチの口吻長は種内で著しい個体間変異がみられた。3)カメバヒキオコシに訪花していたトラマルハナバチの口吻長は、ミヤママルハナバチと同程度の長さであった。
以上より、トラマルハナバチは口吻長変異が大きく、その中でも比較的小さいサイズの個体がカメバヒキオコシに訪花していることが示唆された。この結果は、マルハナバチと花形態のマッチングは、種レベルではなく、個体レベルで訪花頻度に影響し得ることを示唆する。